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謎解きはディナーのあとで2

「ファイルアップデートが出来ないよぉ;;なんでなん?;;」

「こんなときはとりあえず現実逃避して気分を紛らわそう」

「平日の昼間から~ごろごろ~ごろごろ~」

「あーあ、北川景子ちゃんがお姉ちゃんだったらよかったのに」

ちなみに北川景子ちゃんが一番可愛いのはモップガールやで。原作とは全然違う脚本のドラマになってたけど深夜ドラマ大好き勢な私的にはいい改変だったと思う。原作版もなかなか面白いのでそのうち感想書くかも?

で、今回扱うのはそんな北川景子ちゃんがお姉様ではなくお嬢様を演じたドラマの原作第2巻『謎解きはディナーのあとで2』でございます。

なぜ今2巻なん?3巻出てるやん。うん、3巻も手元にあります。今から読むねんけど・・・前に1巻の感想書いたときにですね

「2巻の感想もすぐあげるやでー」

的なことを書いたにも関わらず、なんかタイミングを逃してしまい今に至るという。さすがに「(3巻の感想書く前にやっとかな)いかんでしょ」ということでこのもうすぐ1年が終わるタイミングで感想書きます。

もちろんですが読んだの大分前です。なので本作は短編連作ですが、ひとつひとつに感想書いてくという最近の定番スタイルはやりません。話は覚えてるけど伏線描写とかは完全には覚えてないので。

というわけでとりあえず作品紹介から。

といっても正直いらんよね?かなーり有名作品だから皆知ってるよね?だから一言だけで。

お嬢様刑事と切れ者執事のどたばたコメディミステリです(どんっ

で、感想なんですが今回のテーマはずばり「テンプレ構成の強さ」です。

1巻の感想で触れたんですがこの作品の面白さは会話のテンポの良さとAパートBパートでの対比構造の上手さでした。そう、まさに黄金のワンパターン・・・はじめの一歩様からワードお借りしました(テヘッ

切れ者部下と間抜けな上司のAパート、毒舌吐かれまくりのお嬢様と切れ者執事というBパート。これがこの作品の人気を不動のものにしたテンプレです。

しかもね、マンネリしないように謎解きの内容と話への入り方のバリエーションで上手く飽きが来ないようにしてるんですよね。

ちなみに本作ではこんな感じ。

1.アリバイ崩し 入り方はお嬢様現場へ出勤
2.物の消失   入り方はお嬢様の買い物風景(伏線張りつつ)
3.叙述系    これはお嬢様回(簡単に言うとBパートだけ)
4.雪の山荘系  入り方はお嬢様の朝食→特殊出勤→事件巻き込まれ
5.物の消失   入り方は事件関係者に関する描写
6.密室系    入り方は警部視点

まあ、これは短編連作では当たり前のことかもですけど。ただ、この2パートを使った対比構造をテンプレにしてる作品は結構珍しいんじゃないかな?

はい?物の消失被ってるやん?って。HAHAHA 大丈夫です。読めば分かりますが内容は全然違います。というかこの謎の羅列はてけとーに分類しただけで本来は色んな要素を絡めてあって毒舌を混ぜながら執事君が複雑な謎を解き明かしてくれますのでご安心を。

そう、面白いことは続ければ強い。お笑いでいうところの天丼ですね。

でも、どんなに工夫をしてもワンパターンじゃ飽きが来てしまうのです。じゃあ、同じことを続けてる本作は飽きられてしまうような内容?いえいえ、全然違います。そしてそれこそが本当のテンプレの強さです。

テンプレを読者に意識させつつ、急にパターンを変えるんです。

それが本作のラストである『完全な密室などございません』です。

確かに文字にして並べると3つ目の『殺意のパーティにようこそ』もテンプレじゃなく見えますがこれは1作目にもあったお嬢様として事件に巻き込まれるパターンなので。

で、本作のラストは何を変えてきたかというとテンプレ通りなら絶対にあり得ないはずの状況を作ったんです。このシリーズのレギュラーキャラはお嬢様、執事、警部の3人ですが、ストーリーの都合でテンプレ通りならこの3人が同時に登場することはあり得ないんです。

でも、今回はある方法を使ってストーリーの都合に問題が出ないように3人を一堂に会させています。どんな風にしたかは読んでみて?としかいえないですけど。

基本通りの配球から急に裏をかくような構成。

面白い。続編であることを上手く活かした作品ですね。というわけで是非是非読んでみてくださいな。

・・・で、ここからは雑記です。

一応3巻も感想書く予定です。出来れば年内に。それで今年分の読書感想は締めにする・・・つもりなんですが、読めるかなあ(笑)29日までに記事が上がらなかったら諦めたと思ってください。

30日から3日くらいまでPC使えないのでブログも更新できなかったり。一応咲と1年のまとめ的駄文は自動更新で30、31にも挙げれるようにしようかなーとは考えてるんですけど感想は読まなきゃ書けないので。

一応頑張って読むけどもね。期待せずに待っててください。出来なくても新年には絶対感想書けるようにしときますので。ではでは~。

ロシア紅茶の謎

「私は忘れないよ。君が命を賭けた最後のキスを」

お久しぶりです。読書感想です。普通に麻雀ばっかやってたのと咲について書いてみたかったことを書きつらねた結果こっちがおろそかになるという本末転倒ぶり。うーん、いかんいかん(笑)

今回扱うのは有栖川先生の国名シリーズの第一弾になる『ロシア紅茶の謎』です。またまた短編集なのです。というか多分今年はもう短編連作しか扱わない予定だったり。年末年始のぐだぐだタイムに長編読む予定なのです。

有栖川先生多い気がしますが・・・こないだ整理した結果まだ未読の有栖川作品が3冊あることが発覚しました。うちのブログのエースなので中4日くらいのペースで長いイニングを投げさせても問題ない、よね?

ではでは早速作品紹介にいってみましょう。

○動物園の暗号

動物園の猿山で発見された死体。被害者の右手に握られた暗号。生前、同業の仲間に彼が提示していた謎。その暗号を彼は何故右手に?何かを告発するため?警察が人間関係を洗う捜査をする中、火村と有栖川はこの暗号解読に挑むことに。動物の羅列がひとつに繋がる時、ある真実が浮かび上がる。

分かるかそんなもん。というのが正直な感想。実際これを解こうとしてもかなり厳しい気がします。私はちんぷんかんぷんでしたし、気付けるとは思えないです。

ただ、暗号をただの告発だけに終わらせないところがさすが有栖川先生。ラストの現れてくるデザインのくだりはさすがといった感じでしたね。序盤から動物園であることを生かして上手く対比構造を巡らせていましたし、このラストは綺麗だと思います。

○屋根裏の散歩者

ロングヘアの女性が狙われる連続殺人事件。その犯人に襲われた女性が間一髪で逃げ延びる。その時に落とされた遺留品。それはある喫茶店のマッチ。その喫茶店の近くのアパートで起きた殺人事件。殺された家主はそのアパートの住人のある人物がこの連続殺人の犯人であることを知ったために殺された。屋根裏を移動し、住人の生活を盗み見ていた彼の残した日記の不可思議な記述。これが事件の真相に近づくための鍵。・・・こんな感じ?

これもまた暗号解読系のお話。住人の私生活を覗き見するとかいうアパートの家主としては失格な気がする行為ですけど、その行為によってもっと凶悪な事件の真相が明らかになることに。まあ、明らかになったせいでこの人殺されちゃうんだけどさ。

これも正直解けるとは思えないなあ。ただ、動物園の暗号よりは気付きやすいだろうけど。本当に毎回そうなるん?って疑問はあるんだけどね。

ただ、暗号が何かが分かってもこの話の犯人は分からなかったりします。だから犯人当てに挑んでも無駄ですよー。なぜならその暗号の意味をしっかり理解出来るのは被害者だけのはずですからね。結構やばい捜査法で解決までいくので、暗号解読はおまけって感じです。有栖川先生っぽくない気もしますが、短編としては基本をしっかり押さえてある良作だと思います。

○赤い稲妻

雷雨の中、女性がビルから転落したのを目撃した青年。彼が言うには彼女は部屋で一人だったわけではなく現場にはもう一人いたのだという。女性の人間関係を洗ったところとある弁護士と関係があることが発覚。すぐにその弁護士に連絡をとるが彼の奥さんもまた鉄道事故で亡くなっていて・・・。こんな感じですかね。

登場人物が圧倒的に少ないので、犯人は分かります。というか、わざと分かるように誘導してる感じですね。ただ、この事件の全体像とそれを導くための鍵には気付けない気がしますね。

確かに伏線は置いてあるんですよね。そんなところまで伏線なんかぁと思わされる作品。『46番目の密室』のあとがき(だったと思う)でおっしゃられてたんですが今回もまた密室の謎を解く=事件が解けるという簡単な構造になってないのが魅力ですね。トリックはあくまでロジックのための1ピース。そんな感じ。

○ルーンの導き

火村の部屋を訪れた有栖川。そこで火村は柄にもなく占いをしていた。ルーン文字が書かれたその石にまつわる過去に携わった事件を語り始める。別の国籍を持つ者達が集まったパーティ。ほとんど全員と面識のない人物が殺された。彼が握っていたのがルーン文字の書かれた石4つだった。・・・こんな感じで。

またまたダイイングメッセージです。意味ありげな、でも読者はまるで分からないであろうルーン文字の石の暗号。これも正直気付けないでしょうね。相当難しい暗号です。なんかラストにあっさりばらしが入るんですがそんなに簡単に解けないってこれは。

ただ、今回は犯人当て出来る部類の作品ですね。容疑者の数も十分。きっちりロジックで犯人が分かるようになっています。私?挑戦したけど分からなかったよぉ。

だって細かいんだもん。そんなとこ気付かないって。まあ、これに気付けるから名探偵な訳なんですけどね。鮮やかな論理で犯人が浮かび上がります。

フーダニットってこういうひとつのことから犯人を断定できるパターンと全体像が明らかになってから初めて犯人が分かるパターンがありますけど、個人的には前者の方が好きですね。探偵役が唯一の隙を逃さずに一発で犯人を仕留め切る。それから犯人の独白で少しずつ真実が分かっていくみたいな。

そっちの方が探偵役に人間味があるというか。物語の中とは言え全知全能な人はいないって感じが好きというか。

一人だけ俯瞰で物事を見抜く探偵もそれはそれでかっこいいですけどね。

○ロシア紅茶の謎

新進気鋭の作詞家が当世風の横文字の職業を持つ友人を集めて行った忘年会で毒殺されてしまう。彼らの人間関係を洗うと誰もが動機を持っていそうな状況。他殺と思われるが犯人が一体どうやって毒を盛ったのか、そして一体どのように毒を持ち運び、容器を消したのかが分からない。不可能犯罪に火村が挑む。

うーん、鮮やかな幕引きでした。しかも伏線張りが結構大胆です。

なんとなくこの人なんだろうなぁとは思えるんですが、前述の通り殺し方が分からない。かなり大胆というかなんというか・・・。そんなん絶対実行できへんやろって感じのトリックなんですが破綻してるわけじゃないんだよなぁ。やれるけどやろうと思わない的な。

火村の幕引きと有栖川先生による締めのどちらもかっこよ過ぎです。台詞回しから伏線張り、それらすべてがこの格好いい結末へと繋がっているのがもう・・・。

ただ、この作詞家さんの作った曲についてはなんでこれが売れたん?と思うような内容だったり。文字で追ってるせいかもしれないけどね。もしかしたら曲が付いたらいい感じになるのかもしれません。

○八角形の罠

アリスが原案を出した『八角館の殺人』という推理劇の稽古を観にきた火村とアリス。その稽古中に殺人事件が起こります。毒殺された二人の被害者。犯行に使われた注射器が発見された場所を考えるとどう考えても関係者が殺人を犯したと断定するのは不可能だと思われる状況。ゲーム好きの読者は、次章に進む前にその解答に挑戦していただきたい。

有栖川先生が実際に原案を出されたミステリーツアーのノベカライズらしいです。一回行ってみたいよね、ミステリーツアー。凄く興味があります。

なので、前置きがあり、読者への挑戦が差し込まれています。私も当然謎解きにチャレンジしました。結果は・・・

犯人は分かりました。多分こうだろうなぁと。ただ、メインのハウダニットが解けなかった。なぜ注射器があそこで見つかったのかの謎が分からなかったです。どちらかというと犯人は多分気付けるように誘導してくれてるんですよね。犯人は分かったのに方法が分からない。ぐう悔しい。

で、その方法なんですが・・・確かに出来ると思います。というか実際にやったんだと思います。ただ、気付けと言われると難しいかも。うん、良問ですね。

そんな感じですかね。個人的にはロシア紅茶>八角形の罠>赤い稲妻=ルーン>屋根裏=動物園って感じですかね。ラスト2作はかなり痺れる内容でしたもん。動物園はルーンみたいに暗号解かなくても犯人に辿りつけるとかだったら評価あがる作品ですかね。読者はおそらく解けないけど暗号自体は素晴らしいものでしたし。

結構久々の読書感想でしたがどうでしたでしょうか?なんか何時にも増して日本語が不自由な気がしますけど。ちなみに、今年中に読書感想はあと2つ挙げる予定です。ひとつは大分前に読んであったやつ、もう一つは今から読むみたいな感じですね。

ではでは、国名シリーズの始まりの短編集是非是非手に取ってみてはいかがでしょうか?

儚い羊たちの祝宴

誰もが幼いころに怖がったであろう幽霊とかお化け。そんなものよりも結局一番怖いのは人間。そんな作品。

というわけで今回は米澤穂信先生の短編集、使用人やら令嬢やらが語り手になっているいわゆるお金持ち達を取り巻く常識とはかけ離れた世界の歪みを描いた作品『儚い羊たちの祝宴』について感想を書いていこうかなーって思ってますよー。

とりあえず一番最初に全体の感想を。人間って怖い(断言)

ただ、怖いんだけど美しい。本当に綺麗。鮮やかな伏線回収に、予想外の結末。ラストの一言に絶大な効果をもたらすために考え込まれたプロット、構成。見事、の一言です。

一応ひとつひとつにつながりが全くないわけではなく、あるキーワードが全作品で出てきます。それが「バベルの会」です。一応主にミステリを読む同好会みたいなもの。まあ、それがどういう集まりであるかはラストの「儚い羊たちの晩餐」で明らかになるので詳しくは省きますけどね。

というわけで例によって一つ一つみてきますよー。

○身内に不幸がありまして

上紅丹地方に大きな力を持つ家である丹山家。その令嬢・吹子に幼いころより仕える使用人・村里夕日の手記。丹山家では吹子の兄であり勘当された宗太が死んだことにされてから毎年夏に公にはされない殺人事件が起こる。犯人は宗太と信じる家の者。しかし夕日は犯人に心当たりがあり・・・こんな感じかなあ。

こう書くとフーダニットのように思えますが、犯人に関しては多分予測できます。それと気付けるようにきっちり色んな伏線を置いてくれていますし。この手記自体も相当なヒントですし。

だからメインはだれ?ではなく何故?だと思います。そしてこの理由が読者の恐怖心を煽るんですよね。ラストの独白。特に最後の一文が。その一文で決定打を与えるために上手く作られた作品ですね。

○北の館の罪人

これまでたった二人で生きてきた母が死に際に遺した言葉。「六綱の家に行きなさい」その言葉を頼りに六綱家にいき自分が六綱の旦那様の娘で会ったことを知った内名あまり。他に行くところもないためそこで給仕として働くことになった彼女は訳ありとみえる別館に住む男の世話をすることになる。これは彼女と2枚の絵を巡るお話。

内容的には本作で私が一番好きなのがこの話ですね。ラストの台詞の衝撃といったらもう。別館の男の不思議な注文やあまりに対する接し方と現在の当主とを対比させ、あたかも当主側に問題があるように感じさせつつ実は・・・。

これだけだったらその辺の短編となんら変わりませんけどここで終わらないのが米澤先生の凄いところですね。ラストまでめまぐるしく話が動きます。ただ、気付けない。動いていることに気付けない構造になっているのもいいですね。鮮やかな手腕と見事な演出だと思います。

○山荘秘聞

別荘の管理を任されて1年。美しい別荘を管理者としてしっかり守ってきた女性。しかしながらおかしなことにこれまで一度も来客がない。どうやら雇い主の奥様に不幸があったらしく、奥様のために建てられたこの別荘から足が離れてしまっているのだとか。そんな悶々とした日々が突然好転する。山から滑落した青年を助け、彼の世話をすることになるのだが・・・こんな感じかな。

何言ってんの?といった感じにこれまでの2作とは違いあからさまにおかしなことをしている語り手。読者は違和感しか感じられない状況で物語は淡々と進んでいきます。

この話の探偵役は相当凄いですね。たったあれだけの情報で真実に辿りついてるんだから。で、そういうことやったんかあああああ超怖いやんけえええええええってなるんですけどそれもまた米澤先生の掌の上で踊らされているだけだったり。

ミスリードのさせ方が巧みな一作ですね。物語自体は淡々と進みますが読者の感情、推察は二転三転するように上手く誘導されます。参りましたといった感じ。

○玉野五十鈴の誉れ

名門小栗家の令嬢・純香。彼女の祖母が絶対的な権力を持つ小栗家において彼女は祖母に絶対従うことで生きてきた。学校では友達も作れず、祖母の考え通りに祖母の理想通りの振る舞いをしなければならない。そんな彼女を支えたのが同い年の使用人・玉野五十鈴だった。彼女に勇気を貰いついに大学進学のため家を出ることに成功した純香。だがそれは彼女の不幸の始まりに過ぎなかった。・・・こんな感じかな?

本作で最もよく出来ているのがこれだと思います。基本的に最後の一文で衝撃を与えることに特化した短編集なんですがこれが一番鮮やかな手際でしたね。最初から最後まで計算された構造。上手過ぎる伏線の置き方。

実際展開としては読めるんですよ。多分こうなるんやろうなあと。ただその方法がねぇ・・・秀逸。

しかもやってることはかなりえぐいのに読後に爽快感があるんですよね。人物設定の上手さですね。祖母を憎たらしく描くことで純香と五十鈴の関係を美しく表現しています。

○儚い羊たちの晩餐

「バベルの会はこうして消失した」この言葉から始まる日記。荒れ果てたサンルームで偶然それを見つけた女学生。書かれていたのは聖域から追い出された者の告白。幻想と現実とを混乱してしまう儚い者達の最期。『いつか訪れる儚い者へ』今はここに談笑はない。しかし一篇の物語が後継者を生んだ。

ラストはやっぱりきました「バベルの会」のお話です。明らかに必要なさそうな物語にも無理くり入れてたもんね、このワード。ただ、ラストを飾る物語は凄まじく後味が悪いです。あえて、でしょうね。内容が内容だけに相当心にきます。

キーワードはアミルスタン羊です。ようやく羊に触れてきました。このワード、というか意味を知っている人だと割と早い段階で真相に気付けるんじゃないかな?私は知らなかったけど途中でググっちゃいました。うん、おすすめはできないです。知らずに読んだ方が面白いですよ、多分。

まあ、知らない人でも「あれ?もしかして?」と思わせるように誘導していってるんですけどね。ラストに向けての迫りくる恐怖に対するワクワクドキドキがやばいですもん。

さて、という5つの短編で本作は成り立っています。ちなみに私的には五十鈴=北の館>山荘>儚い羊>身内に不幸がって感じの順位付け。どれも面白いけどね。五十鈴が上手く出来過ぎです。北の館は単純に私の好みですね。

ではでは、今回はここで少し考察を入れたいと思います。テーマは「続きもののラストとしてみた時の『儚い羊たちの晩餐』について」です。実際ひとつの短編としても面白い出来なんですけど続きものとしてみてもなかなか趣深い気がするので。

というわけでここからは・・・

ネタバレ注意でお願いします。















極力する気はないけどね。

『儚い羊たちの晩餐』には書かれていない(と少なくとも私が思っている)謎が残っています。それは・・・

①この日記を読んでいた女学生=いつか訪れる儚い者とは一体だれ?

②何故日記は途中で終わっているのか?書き手・大寺鞠絵はどうなった?

ですね。なのでまずは①についてみていきますよー。

この女学生は誰なのか?候補は4人います。

1.「身内に不幸がありまして」の令嬢・吹子
2.「玉野五十鈴の誉れ」の令嬢・純香
3.「玉野五十鈴の誉れ」の使用人・五十鈴
4. 出てきていない全く新しい人物

全部ありそう。4が本命。対抗が2か3。大穴が1といったところでしょうかね?1,2,3は「バベルの会」の存在は知っていたはずですが何が起きたのかは知らなかったはず。

時期的に考えると2,3は復学後もしくは新たに入学後に2年前の出来事が書かれた日記を読んだことになりますね。

4なら昨年夏の出来事の書かれた日記を読んだとするのが自然ですかね。

1の場合は何故そのタイミングで日記を手に取ったのかが不明なので大穴って感じですね。

ただ答えは闇の中です。深く考えずに4な気もしなくはないけど。

次に②についてみてみますよー。

「わたしは」で彼女の日記は終わっています。そして最後のページに『いつか訪れる儚い者へ』と記されています。この最後のページの文は大寺鞠絵が書いたものだと明記されています。では、本文と最後のページ、書かれたのはどっちが先だったのでしょうか?

私が思うに最後のページは日記部分より早く書かれたのではないかと。この日記が読み手を意識して書かれていることは明記されていますし、最後のページが最初に書かれていたと考えても特に問題があるとは思えません。

鞠絵は日記部分を書いている途中で何らかが起こり、書けなくなったのではないかなと。

つまり、鞠絵も「儚い羊」だったのではないかと。これは厨娘の説明の時に感じたこと。なぜなら「量」が足りないから。パパは新たに追加で客を呼んでしまったから。

ただ、まだ分からないことがひとつ。誰がこの日記をサンルームに置いたのか?

思うに、上の解釈だとこの日記を手に入れることが出来るのはただひとりです。その人が置いたのだとしたらその理由はおそらく・・・。

ね?凄い後味悪いでしょ?でもこう考えると本作の表題が『儚い羊たちの祝宴』というタイトルな理由もなんとなく納得してしまうんですよね。作中で起きた「晩餐」じゃなくこれから起こるであろう「祝宴」を読者に予感させる、そんなタイトルなんじゃないかなーって。

読み込みが足りない気がするのでこれが正解だと言い張る気はないですけども。でも色々考えさせられる。読後も楽しめる良作ですねー。

さてはて、若干ホラーテイストも感じ取れる人間ドラマを集めた本作、是非手に取ってみてはいかがでしょうか?

異邦の騎士

「占星術と斜め屋敷読んだならあとは『異邦の騎士』読んどけば御手洗潔って人間が分かると思うよ」

と、友人に勧められたので早速書店に行ってみたんだ。ない。ない。どこにも置いてないっ!なんでや、島田荘司って言えば占星術かこれって言われるレベルの作品(友人談)じゃないんかいっ!で、探し回ること7つ目の書店。ようやく、ようやく発見しましたぁ。会いたかったよぉ。

というわけで今回は島田荘司先生の『異邦の騎士』でございます。比較的に私がよく読む文庫としては長め?の作品だったので読むタイミングを考えてたんですが、開けてみたらびっくり。なんか普通に熱中してしまった。気付いたら終わってた、そんな感じ。

うん、これはベストワンやわ・・・。面白過ぎる。本格ミステリって感じではないけど一気に読ませる、読者を惹き込んでいく。その描写に、その技量に脱帽です。

ではでは早速作品紹介していきましょうかー。

とある公園で眼を覚ました記憶喪失の男。何も分からない。自分が誰なのか。なぜここにいるのか。全てを失い異邦の地にただ一人置いていかれた男はそこで運命的な出会いをする。彼女がいるから、俺は生きていける。新たな生活に慣れ始めたころ、男はある人物に出会う。「御手洗占星学教室」の主に。・・・こんな感じ?

うーん、書いてみたけどさ・・・これだと「記憶喪失の男と彼と生活を共にしている女性とこのシリーズの探偵役である御手洗潔がいましたよ」ってことだけしか伝わらないよね?実際昔話の「むかしむかしあるところにお爺さんとお婆さんがいました」と大差ないくらいの紹介しか出来てないよね。

いや、だって読者に情報くれないんだもん全然。語り手がさ、この記憶喪失の男なんだよね。で、前半部分に関しては本当にただ普通に生活してるだけなんだよ。多少この幸せは続かなかったんやで的伏線は入れてたんだけどさ。どう考えてもこの人だけ何が起こっているのか分からないまま話が進んでいくから読者も何が起こってるか分からないんだよ。

でも、男が自らの過去を探り始めるあたりから話が動いていく。結構ぞくぞくする描写が続く。衝撃が次々に読者に与えられる。待ってましたとばかりにこっちもどんどん惹き込まれていくんだよね。

「!?」

うん、読み進めるとこんな感じかなーって。あとはもう御手洗潔の独壇場だから。御手洗潔という人物が分かるという友人の評価は正しいものだったと言わざるを得ませんね。唐突なんやもん、色々と。それなのに、きっちり話を完結させちゃうんだもん、鮮やかに。

読者は情報不足に嘆かされるけど最終的に読み終わってみると納得せざるを得ない作りなんですよね。別に何も与えられてない訳じゃないしね。謎は普通に沢山提示されるけどその謎を解明する鍵が渡されないだけだから。

ちなみにミステリ読むときは読者への挑戦があろうがなかろうが謎解きを勤しむという恐らくは理想的な読者であろう私はもちろん今回も色々考えながら読んでました。うん、分かったのは一番最後に明かされる謎だけでした。しかも描写からではなく、内容と構造的に多分そうなんだろうなぁというお話の中の探偵には絶対真似できない手法?からの予測でしたし。

分からないことだらけ。情報は明け渡されない。明らかに読者にとっては不公平。でも、最後まで一気に読ませる、読まなきゃいけないような錯覚を読者に与えてくる作品ですね。で、読み終わって結局納得させられるんですよ。御手洗潔の推理を聞いた記憶喪失の男のように。

これはミステリではない、私の日常を切りぬいた私小説を切り刻んで謎解き小説に組み替えただけ・・・なんて言ってるあとがきももちろん興味深いものなんですが、面白いのは完全改訂版用に書かれた方のあとがきだと思います。

そのあとがきは要約すると『異邦の騎士』という作品が世に出るまでの経緯ですね。本作は御手洗潔を探偵役に据えた一番最初の物語のはずなんですが・・・発表は大分後なんですよね。その理由が・・・

①1作目としてはパンチが足りないと考えた。そのため、強い作品を先に発表してたら出すタイミングを完全に逃した。

②タイトル決まらない。ちなみにここで言われている仮タイトル『良子の思い出』もなかなか趣深いんですが、苦し紛れに付けたと仰っているタイトル『異邦の騎士』正直この作品にどんぴしゃな気がする。

でね、さらにこんなことを仰っています。

「占星術が長らく私の著作の読者人気投票ベストワンだったけど出して数年したら異邦の騎士が1位になるようになったわー。理由①の判断はミスだったかもやでー」(もちろんアレンジしてます)

ただ、これには反論したいかな。本作『異邦の騎士』はその発表がこの時点だったから人気が出た作品だと思います。御手洗潔という探偵のシリーズ。これが前提になっているからこそその面白みが分かる話だから。多分これが一作目だったら全く取り上げられないということはないでしょうけど御手洗潔が日本を代表する名探偵の一人に名を連ねることはなかったのではないかなと。

ミステリとしては若干反則気味の描写も、前半の話の動かない顔見せ部分もこの作品がシリーズものであるからこそ気にならないし、むしろ作品に深みを持たせている描写になっているのかなと。

あ、だからこそなんですが本作を読む前に必ず占星術と斜め屋敷は読んだ方がいいと思います。もちろん読んでなくても楽しめるんでしょうが、より深く作品を味わうためにも是非。

記憶喪失の男と一緒に読者も道化のように踊らされている。踊らされてることにすら気付けない。指摘されて、ようやく舞台の全容が分かる。驚愕。でもそれが楽しい。面白い。そんな作品。

島田荘司先生の最高傑作と名高い本作、是非是非味わってみてはいかがでしょうか?



捩れ屋敷の利純

けれども……彼女の忠告を尊重して。ここはひとつ……、黙っていよう、と思うのだ。

はい、というわけで今回は森博嗣先生のVシリーズのこの作品『捩れ屋敷の利純』についての感想を書かせて頂きます。さて、本作は実は過去記事で少しだけ触れてます。それが『四季』シリーズ、特に秋なんですが・・・

本ブログで『四季』はネタバレ自重せずに感想を書いてたりするので本作読んでない人は出来る限り観ないでください。やばいネタバレがあるわけではないんですがそれでも一応・・・。え?そんな感想書くなって?読む順番がおかしかったからねしょうがないね。

という言い訳をしつつ。というわけであの時いまいち分からなかった大部分の出来事が本作で補完出来ました。本作はVシリーズの1冊なのですが少しだけイレギュラーだったりします。なんと、S&Mシリーズとのクロス作品なんですよぉ。・・・いや、知ってて買ったんだけどね。

はい、じゃあそんな本作の作品紹介にいきましょう。

エンジェル・マヌーヴァという工芸品を観るため秋野秀和と名乗り熊野御堂家の屋敷を訪れた保呂草潤平。不思議な建造物を観るため国枝桃子と共に屋敷を訪れた西之園萌絵。捩れ屋敷と呼ばれる建造物、不思議な密室状態にあるログハウス。二つの物語が二つの奇妙な建物で起きた殺人事件とエンジェル・マヌーヴァ盗難事件でクロスする。招かれなかった二人の探偵役を尻目に。・・・こんな感じかな?

瀬在丸紅子と犀川創平は今回屋敷に招かれなかった人々なのでほとんど出てきません。ただ、犀川先生は少ない出番できっちりお仕事してますし、瀬在丸紅子もプロローグとエピローグに出てきていい味を出しています。というかですね、この作品はプロローグとエピローグが実は一番大事だったりします。

本作読んでてまず思ったこと。国枝ちゃんってこんな可愛かったっけ?本作で一番いいキャラだった気がする。そもそも国枝ちゃんはある理由から外見が男に見えるという特徴を付けれらてしまった可哀そうなキャラだったりします。詳しくは『すべてがFになる』を観ましょう。ただ、シリーズが進むごとにどんどんいいキャラになってますよね、うん。

そもそも今回は登場人物が少ないです。シリーズキャラクターの保呂草、萌絵、国枝の3人の他に5,6人しか出てきません。なので、消去法で犯人分かっちゃいます。というか、多分わざと知らせてますね、これは。話的にも犯人は論理的に導いてるわけではないですしね。

今回問題になってるのは複数のハウダニットです。屋敷物ですしある意味当然ですね。こんな建物普通作らないだろっていう屋敷で起こる殺人は意外に好きだったりします。あきれることもあるけれど小説の中でしかできないトリックだからね。やっぱり面白いです。

今回のもなかなか強引な仕掛けでした。けどワクワクは大きかったですね。

一応本作の探偵役は萌絵ちゃんになります。ただ保呂草さんもそれなりに色々動いています。本作はこの二人のやり取りが魅力ですね。保呂草さんは萌絵に紅子の面影を、萌絵も保呂草さんに犀川の匂いを感じているようです。クロスっぽいね、うん。

ただ、本作の一番の面白みは実はプロローグの記述にあります。プロローグだけ保呂草さんの一人称で書かれています。ここの記述、かなり重要な伏線なので覚えておいてください。

「いつも三人称で書いているから今回もそうするでー」

これが最大のポイント。これを意識すると違和感を感じ取れるかも。といってもストーリー上でこの違和感は大した意味はないです。この違和感は続きものだからこそ面白みを持つものだから。

ちゃんとエピローグでネタばらしが入るのでご心配なきよう。ただし、一番大事な情報は隠されたままです。本作で語られなかった真実が『四季』の秋で語られます。そのための伏線の話なんだと思います。ただ、いやらしいのが本作の形式をこうしておくことでシリーズの読者にある勘違いを植え付けています。

そのへんは何度でもいいますけど『四季』を読んでくださいね。私はとても後悔しています。どうして順序立てて読まなかったのだろうと(笑)まあ、いまさらなんですけどね。

大体いいたいことは言ったかな?というわけで人気シリーズがクロスする、過去、そして未来に向けた伏線の話、是非読んでみてはいかがでしょうか?


【どうでもいい追記】

一応ですね、『四季』を読んだときに前提条件としてあげたもう一作『有限と微小のパン』も入手済みだったりします。いずれ感想を書く予定です。で、これ読んだら私的おすすめ読書順序的なのも書こうかなーって思ってます。とりあえずこれだけは絶対読もう的なやつを。

ただ・・・今めちゃくちゃ小説積んでましてね。いつになるかは分かりません(笑)

頑張って年内以内には書きたいところですけど、気分次第なのでどうなるかは分からないですねぇ。
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