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異邦の騎士

「占星術と斜め屋敷読んだならあとは『異邦の騎士』読んどけば御手洗潔って人間が分かると思うよ」

と、友人に勧められたので早速書店に行ってみたんだ。ない。ない。どこにも置いてないっ!なんでや、島田荘司って言えば占星術かこれって言われるレベルの作品(友人談)じゃないんかいっ!で、探し回ること7つ目の書店。ようやく、ようやく発見しましたぁ。会いたかったよぉ。

というわけで今回は島田荘司先生の『異邦の騎士』でございます。比較的に私がよく読む文庫としては長め?の作品だったので読むタイミングを考えてたんですが、開けてみたらびっくり。なんか普通に熱中してしまった。気付いたら終わってた、そんな感じ。

うん、これはベストワンやわ・・・。面白過ぎる。本格ミステリって感じではないけど一気に読ませる、読者を惹き込んでいく。その描写に、その技量に脱帽です。

ではでは早速作品紹介していきましょうかー。

とある公園で眼を覚ました記憶喪失の男。何も分からない。自分が誰なのか。なぜここにいるのか。全てを失い異邦の地にただ一人置いていかれた男はそこで運命的な出会いをする。彼女がいるから、俺は生きていける。新たな生活に慣れ始めたころ、男はある人物に出会う。「御手洗占星学教室」の主に。・・・こんな感じ?

うーん、書いてみたけどさ・・・これだと「記憶喪失の男と彼と生活を共にしている女性とこのシリーズの探偵役である御手洗潔がいましたよ」ってことだけしか伝わらないよね?実際昔話の「むかしむかしあるところにお爺さんとお婆さんがいました」と大差ないくらいの紹介しか出来てないよね。

いや、だって読者に情報くれないんだもん全然。語り手がさ、この記憶喪失の男なんだよね。で、前半部分に関しては本当にただ普通に生活してるだけなんだよ。多少この幸せは続かなかったんやで的伏線は入れてたんだけどさ。どう考えてもこの人だけ何が起こっているのか分からないまま話が進んでいくから読者も何が起こってるか分からないんだよ。

でも、男が自らの過去を探り始めるあたりから話が動いていく。結構ぞくぞくする描写が続く。衝撃が次々に読者に与えられる。待ってましたとばかりにこっちもどんどん惹き込まれていくんだよね。

「!?」

うん、読み進めるとこんな感じかなーって。あとはもう御手洗潔の独壇場だから。御手洗潔という人物が分かるという友人の評価は正しいものだったと言わざるを得ませんね。唐突なんやもん、色々と。それなのに、きっちり話を完結させちゃうんだもん、鮮やかに。

読者は情報不足に嘆かされるけど最終的に読み終わってみると納得せざるを得ない作りなんですよね。別に何も与えられてない訳じゃないしね。謎は普通に沢山提示されるけどその謎を解明する鍵が渡されないだけだから。

ちなみにミステリ読むときは読者への挑戦があろうがなかろうが謎解きを勤しむという恐らくは理想的な読者であろう私はもちろん今回も色々考えながら読んでました。うん、分かったのは一番最後に明かされる謎だけでした。しかも描写からではなく、内容と構造的に多分そうなんだろうなぁというお話の中の探偵には絶対真似できない手法?からの予測でしたし。

分からないことだらけ。情報は明け渡されない。明らかに読者にとっては不公平。でも、最後まで一気に読ませる、読まなきゃいけないような錯覚を読者に与えてくる作品ですね。で、読み終わって結局納得させられるんですよ。御手洗潔の推理を聞いた記憶喪失の男のように。

これはミステリではない、私の日常を切りぬいた私小説を切り刻んで謎解き小説に組み替えただけ・・・なんて言ってるあとがきももちろん興味深いものなんですが、面白いのは完全改訂版用に書かれた方のあとがきだと思います。

そのあとがきは要約すると『異邦の騎士』という作品が世に出るまでの経緯ですね。本作は御手洗潔を探偵役に据えた一番最初の物語のはずなんですが・・・発表は大分後なんですよね。その理由が・・・

①1作目としてはパンチが足りないと考えた。そのため、強い作品を先に発表してたら出すタイミングを完全に逃した。

②タイトル決まらない。ちなみにここで言われている仮タイトル『良子の思い出』もなかなか趣深いんですが、苦し紛れに付けたと仰っているタイトル『異邦の騎士』正直この作品にどんぴしゃな気がする。

でね、さらにこんなことを仰っています。

「占星術が長らく私の著作の読者人気投票ベストワンだったけど出して数年したら異邦の騎士が1位になるようになったわー。理由①の判断はミスだったかもやでー」(もちろんアレンジしてます)

ただ、これには反論したいかな。本作『異邦の騎士』はその発表がこの時点だったから人気が出た作品だと思います。御手洗潔という探偵のシリーズ。これが前提になっているからこそその面白みが分かる話だから。多分これが一作目だったら全く取り上げられないということはないでしょうけど御手洗潔が日本を代表する名探偵の一人に名を連ねることはなかったのではないかなと。

ミステリとしては若干反則気味の描写も、前半の話の動かない顔見せ部分もこの作品がシリーズものであるからこそ気にならないし、むしろ作品に深みを持たせている描写になっているのかなと。

あ、だからこそなんですが本作を読む前に必ず占星術と斜め屋敷は読んだ方がいいと思います。もちろん読んでなくても楽しめるんでしょうが、より深く作品を味わうためにも是非。

記憶喪失の男と一緒に読者も道化のように踊らされている。踊らされてることにすら気付けない。指摘されて、ようやく舞台の全容が分かる。驚愕。でもそれが楽しい。面白い。そんな作品。

島田荘司先生の最高傑作と名高い本作、是非是非味わってみてはいかがでしょうか?



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