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妃は船を沈める

街角ですれ違い、もう二度と会うことはないと思っていた人物と、歩いているうちに再会したような気がした。

はい、という訳で今回は有栖川有栖先生の『妃は船を沈める』です。最近学生アリスに浮気してたので今回は作家アリスの長編作品ですねー。長編といっても第一部と第二部で異なる殺人を扱う二部構成。もともとは第一部を中編作品として発表されたものだったのですが上記の「再会」があり後日談として物語を作ったところこれ繋げたら長編になるのでは?的発想のもと刊行されたのが本作ですね。

タイトルにある「妃」が先生が「再会」を果たした登場人物であり二つの事件のキーパーソンになる人物ですね。個人的には好きなんですけど他の方の感想を読むと意外と不評?魅力が伝わらないのだとか。そうかな?個人的にはなかなか味のあるキャラクターだと思ったのだけれど。

さていつもなら作品紹介なんですけど今回は前後篇で違った事件を扱ってるので分けて紹介しつつそれぞれに感想を書かせて頂くという感じで進めますね~。

第一部 猿の左手

一台の車が海に消えた。一見自殺に見えるもののそう断言は出来ない不可解な状況の数々。被害者から検出された睡眠薬。何故被害者は後部座席にいたように見えるのか?被害者が後部座席にいたのなら誰が運転していたのか?運転した者が別にいたのであればその者はどこに消えたのか?現場に残された多くの謎。そして被害者にかけられた多額の保険金。様々な思惑が絡み合う事件に臨床犯罪学者・火村英生が挑む。・・・こんな感じですかね。

久々の作家アリス。そして久々の火村英生です。うーん、やっぱこのコンビもええよね。

本作の容疑者は3人。ただ全員がこの犯行は不可能のように見える状況です。とはいえ、どんなタイプの仕掛けが施されていて誰が犯人なのかは早い段階で気付けるかも。煙幕がある訳ではないからね。ストレートに考えればなんとなくは分かるんじゃないかな?

ただそこは有栖川有栖先生です。これを単純と感じさせない。先生の作品を読むといつも感じるんですが本当に美しい。変化球のキレ味で空振りをとる作品が多い中抜群のコントロールのストレートで手が出せずに見逃し三振を取られる、そんな感じの作品ですね。

個人的には第一部のこちらの事件の方が好きですね。複雑ではないけど鮮やかといった感じ。しかも確かに続編を作る余地が残されている。だってまだもう一つ残っているのだから、伏線というか願望というかそういうものが。

で、本題。こっち側の話では『猿の手』という短編の名作の解釈論が事件を解くキーになっています。これが挟まっているから単純な推理物ではなくさすが有栖川先生といった作品になっているんですが。

ちなみに私は『猿の手』を読んだこともありませんでしたし、どういう話かを知らなかったんですがそれでも問題なく読ませる話を作っているのはさすがですね。そしてこの2つの解釈論自体が面白いんです。確かにそうもとれるなあと。そう考えた方が、またそう感じさせることが作者の真の狙いなのかもと思わされてしまいますね。

そしてこの解釈論を論理の歯車に入れているところがまたにくいですね。綺麗。

幕間

二つの事件を繋げる幕間なんですがその名の通り事件は起こりません。ですがここの描写は好きです。深い意味はないです。第一部の謎解きの舞台になった異国情緒漂うレストランでのアリスと銀髪の女主人の会話なんですがなんかいい感じ。上手く言葉に出来ないんですけど。

タイトルの元ネタにもなっている『難船』というファド(ポルトガルの民族歌謡らしいです。ウィキペディア先生によると)の名曲に触れてますね。あと次に繋がる猿の手と3つの願いについても触れています。まさに幕間ですね。

はい、読み終わった後聞いてみました。思ってた以上に迫力を感じましたね。うん、ごめんなさい。音楽に疎いので陳腐な言葉しか出てこないんだ。でも凄みは伝わってきたかな。

第二部 残酷な揺り籠

地震の前後に起きた殺人事件。その捜査を依頼された火村英生と有栖川有栖はその現場となった邸宅で「妃」と再会を果たす。不可解な現場。容疑者に挙げられる人物にはそれぞれアリバイか犯行に及べない事情が存在していた。狡猾な犯人と頭の切れる犯罪学者。ふたりの対決が決着する時猿の手は3つ目の報いを招く。・・・こんな感じですかね?

こっちもかなりの出来です。が、第一部の方が面白いかなというのが正直な感想。確かに真相を聞くと筋は通ってるんですけどなんだかもやもやが消えないですね。

ただ、有栖川先生の作品ですからもちろん論理的におかしいところとかもなく確かに犯人はあの人でしかあり得ない構図になっています。ただ、犯人に運がなさすぎやしませんか?ひとつでも犯人に有利に動いていたら捜査は立ち往生したまま迷宮入り出来た気がします。

まあ、小説で犯人に利する偶然の出来事が起きて迷宮入りなんてあり得ない訳ですけどね。これもまた願いを叶えた者へのそれ相応の報いと捉えておきましょうかね。

・・・といった感じでしたね。全体を通して猿の手にまつわる話が続いていきます。何かにすがって願いを叶えた者には、定まっていた運命を変えてしまった者には、報いが、災いが降りかかる。作中に出てくる3つの願いはもちろん猿の手ではなく人の手で叶えられるんですが3つとも相応の災いが起きました。

もちろん小説の構図としてもこの構造は素晴らしい。でもなんらかのメッセージも隠れている、そんな作品だった気がしますね。具体的にどんな意図が?と聞かれると言葉に出来ないんですけど。

さて、有栖川先生の代表作である作家アリスシリーズの名探偵・火村英生が出会う魔性の女性「妃」・・・猿の手の魔法か、彼女の魅力か、それともただの偶然なのか、一人の女性を中心に起こる二つの事件、是非堪能してみてくださいね。

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