どんどん橋、落ちた

綾辻、白川、風間、福本が魅せてくれたあの至高の1局はおそらく私の中で超えることのできない牌譜として残り続けるのだろう。(敬称略)

いやあ、生で観れへんかったことにはちょっと後悔しております。あとあとDVDレンタルしてきて観たんですが・・・なにあれ、漫画?って感じの展開。素人、玄人関係なく熱中できる、まさに魅せる麻雀でしたね~。

ってわけで今回はあの激戦を制した、新本格の旗手、綾辻行人先生の『どんどん橋、落ちた』でございます。

綾辻先生といえばやっぱり真っ先に思い浮かぶのは「館」シリーズですが、さすがに人気シリーズなのでこっちの方は探すのにあんまり苦労しないんですよね。大体どんな書店にも置いてあるというか。一方本作は私の近隣の書店全店回りましたがどこも置いてなかったのです。当然読みたいという気持ちは増していくばかり。で、こないだ偶然にも発見したんですよ、ちょっと遠出したときふらりと立ち寄った本屋さんで。はい、即購入です、もちろん。

ほいで、一気に読み進めた訳です。これがまた面白い面白い。さすが綾辻先生といったところですね。なので本ブログで取り上げる記念すべき綾辻作品の一作目はこれにしようと思い立ち、今こうして感想を書いている訳です。

それにしても新本格が異常に多い気がするなあ、このブログで取り上げてる作品。やっぱり好きなんでしょうね、こういういわゆる本格派推理小説。いや、別にいわゆる社会派といわれる作品が嫌いなわけではないですよ?松本清張先生や宮部みゆき先生、東野圭吾先生も社会派の方が多いかな?などなど興味はめちゃくちゃあります。実際読まない訳ではないですもん。

ただね、社会派の作品の方が世に受け入れられてるじゃないですか、どうしても。本格、さらに言っちゃえば新本格は人を選ぶというか、苦手にしている人も多いでしょうから。それはつまり世間的には社会派の作者さんの方が知名度が上ということになり、そうなると私の天邪鬼の部分が顔を出し、結局手を付けずに時が過ぎるパターンが多いですね。私の天邪鬼ぶりに関しては過去記事を参照でお願いします。この記事ですね→http://mitikusaboya.blog.fc2.com/blog-entry-9.html

とはいえ、新本格の中でも主力組の作品ばかり扱っている段階でかなりのミーハーなんですけどね、やっぱり。

うん、いつも通り前置きが長いなあ。じゃ、そろそろ始めますか。まずは作品の紹介からやっていきましょう~。

「読者への挑戦」という形で進む小説。。問題編と解答編に分かれる形式の作品群に綾辻先生自身が挑む。フェアプレイ、あくまでその範疇で進むフーダニット、いわゆる犯人当て。新本格の第一人者綾辻行人が叩きつける読者への5つの挑戦。「君はこの謎を解くことができますか?」・・・こんな感じですかね。

今回は話の内容ではなく形式的なことで紹介してみました。本作は短編5編を収録している作品で一応関連性が全くないわけではないのですが、内容の紹介で1つの作品としての紹介をすることは不可能であると判断したのでこんな形に。

さて、実は今書いた紹介文、ミステリにおけるフーダニットにおけるルールを実は破っていたりします。簡単に言うと正確ではない表現を使っている部分があるんですが、別にこの記事は本格ミステリの作品ではないし、それは重大なネタバレにつながる恐れがあるのであえて訂正せず進みましょう。

じゃあ今回の5つの挑戦状、私の結果を踏まえながら簡単に一つ一つみていきますか。

ネタバレはしないつもりですが、注意が行き届かないところがあるかもしれませんので一応ネタバレ注意ということでお願いします。

一問目 結果:不正解 分かったのは動機だけでしたね。犯行方法が分からずどう考えても不可能犯罪なので犯人がいないなんて訳のわからない結論にたどり着いてしまいました。解答編をみて思わずやられたと思った作品。

二問目 結果:不正解 綾辻先生と同じ結論にたどり着きました。が、これ不正解なのよね。言われてみれば確かに伏線は結構張ってあるんですが・・・無理だよ、気づけないよぉ。

三問目 結果:不正解 というよりこの章は「真相」にたどり着くのは不可能なのでノーカン扱いでもいいかも。唯一問題と解答が分かれてない作品。トリックはなかなか趣がある感じでした。さすがに伏線を張るのが上手いです綾辻先生は。まさに匠の技でしたね。

四問目 結果:不正解 おいおい大丈夫なんこれ?と間違いなく感じてしまう作品。だからこの章だけ実際の~なんて注意書きが最初にしてあったのね。タイトルだけじゃ気付きませんでしたが、最初に出てくる登場人物でネタに気付きました。内容自体はかなり秀逸な出来。綾辻先生もこの章が一番正統派とおっしゃってますし。いや、内容はダークだし、パロディとしては明らかに問題作なんですけども。

五問目 結果:不正解 トリック自体は分かりました。ただ問題には確かに答えられてないんですよね、私も先生も。まあ、このトリックは確かに素晴らしいですが本作を読む前に同じトリックを使った作品をみたことがあったので気付きました。私はコメディ風ミステリードラマ?ミステリー風コメディドラマかな?は好きなんですよ。トリックとか時効警察とか、・・・社名を背負った女子高生刑事の話とかね。まあ、社名変わっちゃったんですけど。

うーんこの完敗具合・・・。全敗じゃないですかあ。

さて、一応ここで前提知識の確認です。綾辻行人先生が得意としているのは叙述トリックである、ということ。これはある種ネタバレになっちゃうかもだけど。知ってても騙されるのが叙述トリックの素晴らしいところなのでご容赦を。ちなみにこれ関連は・・・

「アンフェアじゃないの?」

なんて議論がアクロイド殺しのころから未だに続いてますが、私的にはフェアなアンフェアはミステリーではフェアだと思ってます。これに関しましては後日駄文でまとめると思いますのでここでは触れるだけにしておきましょう。

ほいで、この作品に対する私の考えを述べていこうかなあと。きっかけはラストの記述の意味が分からなかったことに起因するのですが(これについては完全にネタバレなのでラストに回します)、答えを求めて本作の感想を述べられている方のブログやレビューなんかを読み漁りました。で、少し気になったことがありますのでちょいとお付き合いください。

「人が描かれていない」

これは綾辻先生によるあとがきでも触れられていたこと。デビューからずっと言われ続けてきたようです。

うーん、そうかなあ。結構愛着の湧くキャラクターもいるのだけれど、綾辻作品。あくまで個人的にはですけど。まあ、先生の作風上キャラを細かく描写することはできないのは事実だとは思います。

「これは小説?犯人当てのクイズやん。ただの言葉遊びやん」

意外にも多かったこの感想。確かに人を選ぶのかもしれません。確かに言葉遊びだし、確かに意表を突かれる。ちょっといらってなるのも理解できます。実際作品の中の先生もいらいらしてらっしゃいましたしね。これは多分人が描かれてないことに起因することだと思います。

でもね、私はこう思います。

「人が描かれることって重要なことなのでしょうか?」

前に私にとっての小説の話をしたことがありますがもう一度。小説とは背景描写、登場人物の動きなどのピースを使って一枚の絵を完成させることです。少なくとも私の中では。だから登場人物は、実際はただの駒なんですよ。駒を動かすことでストーリーを作り上げていく。ラストに楽しみ、悲しみ、驚き、教訓などを読者に与えるために伏線も、登場人物も、世界設定も存在するものだと私は思います。

だから人が描かれているなんてことは必ずしも必要ではないんです。きちっと一本の話がまとまっていること、これが重要なんです。念を押すようですが、あくまで私の意見ですけど。

例えば恋愛物のストーリーを完成させるなら人の感情を描くことはむしろ必須でしょう。いわゆる社会派ミステリーは人間関係をしっかりと描写していなければただの駄作になってしまうでしょう。

でも本格ミステリーは、すこし事情が違います。これはトリックを使って読者に驚きをもたらすものですから。大事なのは人ではなく、いかに理路整然と話がまとまっているかが重要なんですよ、やっぱり。作中の綾辻先生がおっしゃっているように不必要なら動機だっていらないんです。ひとつの話として読者に魅せ付けれるものがあるのならば。

だから、本作は立派な小説です。これが言いたかったこと。もちろん独りよがりで稚拙な論理展開ですけど。

うん、こんな感じかなあ。言いたいことは大体書いたはず。

ミステリー界の巨匠が送る読者への挑戦状。是非受けて立ってみてください。

ここから先は本編の内容に関わる話なので特にネタバレ注意です。一応ドラッグしていただければみれるような形を取らさせて頂いていますので大丈夫だという方のみみてください。


私はどうしても最後の記述の意図を読み解くことができませんでした。まだまだ未熟者ですので。で、しっかりとそのメッセージを読み解いた方がおられましたのでその答えをここにも記しておきます。

甲虫=本格ミステリー 蟻=過去作品を踏襲しつつ、本格ミステリーを書いている現代の作家たち です。

どういうことかというと、ミステリーはどうしても過去作品が築きあげてきたものを模倣しつつ作らざるを得ません。だから甲虫、先人達が作り上げてきた本格的ミステリーという歴史、文化を使って作品を書いていく蟻、本格ミステリーの作家達、自分もその蟻のひとりであることを示しているみたいです。この様を「食い荒らす」という表現で表わすところが先生らしいといえばらしいですね。

つまりこれは先生の決意表明。本格ミステリーを書き続けていく、という。自分がこの世界で生きていく、確かに批判もあるだろうし、自分の中でも正しいかどうか分からない、それでも私は本格ミステリーを書き続ける、という。


綾辻先生の苦悩と決意が感じられる本作は、やはり先生の代表作のひとつに挙げられる作品ですね。

以上、勝手な自己解釈と私的な感想でしたあ。
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まとめtyaiました【どんどん橋、落ちた】

綾辻、白川、風間、福本が魅せてくれたあの至高の1局はおそらく私の中で超えることのできない牌譜として残り続けるのだろう。(敬称略)いやあ、生で観れへんかったことにはちょっ...

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